時代はデジタル化が進んでいるけれど、農業って肉体労働だし、天候に左右されるし、必ず収入につながるわけではないので大変な仕事ですよね。
そんな農業をメタバースでできたら天候に左右されることなく、在宅で行えちゃうから楽になりそうだけど実現可能なのでしょうか。
メタバースは仮想空間のことで、ゲームや音楽との相性がいいんだよね
実際にメタバースが普及している分野は、ゲームや音楽などのエンタメ業界が多くなっています。
残念ながら2022年2月時点では、あまり農業分野には普及していません。
しかし、実際にメタバースで農業分野を広げる取り組みは始まっているため、そのいくつかを紹介したいと思います。
記事の後半では、日本が現在抱える農業の問題をメタバースや最新技術で解決する方法も解説していきますよ。
メタバースと農業の組み合わせは実現できる
メタバースと農業って全然想像がつかないけど
確かに、メタバースという最先端技術と日本の一次産業の農業の組み合わせって実現が難しそうな気がしますね。
しかし、Clusterというメタバースプラットフォームでは農業分野のワールドが公開され、メタバースと農業の組み合わせが実現しています。
Twitterから始まった農カードPROJECTってなに
農カードPROJECTとは全国の農家が「農業をもっと身近に感じてもらいたい」と思い、農カードを使って盛り上げようと立ち上げたプロジェクトのことです。
農カードとは、農家のトレーディングカード(トレカ)のことで、元々青森県の漁師が作っていた「漁師カード」からヒントを得て、農家版を作られました。
愛知県のミニトマト専門農家の小川さんという方が、Twitterでつぶやいたことがきっかけで広まったそうです。Twitterが始まりというのが面白いですよね。
実際のカードの画像を見てみると、農家の方の写真と活動県、名前、農園名、作物が載っていてひと目で「どこで何を作っている農家なのか」と分かります。
裏面にはQRコードがあって、その農家の作物を購入できるサイトに飛べるようになっています。
農家の方の笑顔と美味しそうな作物を見て、安心して購入することができるのは嬉しいですね。
そして、農カードは1つの農家につき最大4種類あるそうなので、違う種類を集めることができる楽しみもあり、私も集めてみたいと思いました。
農カードPROJECTのサイトでは、今月のピックアップカードとして、その月に旬を迎える作物を育てる農家のトレーディングカードが紹介されています。
実際にメタバース上で農カードが展示されている
メタバースのプラットフォームの1つである「Cluster」とは、3Dアバターを選んで公開されているワールドを散策したり、イベントや音楽ライブに参加したりできるサービスです。
そのCluster内で、農カードPROJECTのワールドが2022年2月8日から配信されています。
このワールド内では農カードが展示されており、気になった農カードの農家の購入サイトに飛べるようになっています。
今後、さらに農業とメタバースを身近に感じてもらえるような活動が、展開されていくと思われるため気になる方は要チェックですね。
Cluster内では、まだ農業に関するワールドは少ないですが現在公開されているものを紹介します。
<農カードラジオ>
毎月第2・4土曜日の21時から22時までTwitterで配信中の「農カードラジオ」がClusterのイベントとしてTwitter本編のあと22時30分から配信されます。
農家の方の生の声が聞けるラジオは、農業をしていく上で参考になりそうですね。
<開拓魂-バーチャル農業->
2021年11月27日から配信されています。メタバース上で稲を植えて収穫する体験ができます。
メタバースで農業をするにはNFTがキーポイント
メタバースと必ず一緒に語られるNFTとは唯一無二の存在を証明できる技術のことです。
このNFTを使ってメタバース上で「特別購入権」を発行することで、農業分野にも発展させることができると言われています。
NFTとは日本語にすると非代替性トークンになり、替えの効かないデータや通貨、モノや証明のことを表しています。
なぜNFTが画期的な技術なのかというと、デジタルで作成された本物と偽物の区別をつけることで、唯一無二の存在を証明できる技術だからです。
- 不正に改ざんやコピーされる心配がなくなる
- ネット上で安全な取引ができるようになる
- 転売のたびに著作者に報酬が支払われ、市場での取引の価値が高まる
- これまでの取引がすべて履歴に残る
- データの所有者が明確になる
メタバースと農業についての本がすでに出版されている
株式会社農情人から出版されている『農業の常識を超越する「Metagri」』は、NFTを農業界に持ち込むためのアイデアをまとめた一冊となっています。
その中のアイデアの一つに「レアな市場に出回らない農作物の購入権をNFTで発行する」というものが紹介されています。
例えば、年間で数十個しか収穫できないメロンの購入権をNFTと紐付けてメタバース上で売買するというものです。
年間で数十個しか収穫できないメロンってどんな味なのか少し興味がそそられませんか。
ブランド名が強いものであれば、それだけで宣伝にもなるでしょう。
さらにその購入権をもっていると、特定のコミュニティに入れたり、特設サイトにアクセス出来たりすると希少性が高まりやすくなります。
そして、NFTにより保有期間を見える化し、長期の方を優待する仕組みも取り入れることもアイデアとして紹介されています。
株主優待のように、数年間保持している方には特別なサービスを提供するイメージと捉えると分かりやすいですね。
他にも色々な視点からメタバースと農業について書かれているため、興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。
メタバースで農園を作って農作物を販売する
メタバース内で土地を購入し農園を作って、実際の農園と同じように農作物を販売できたらいいですよね。
ビームスの例に習えば、実現も不可能ではないと思います。
ビームスは「バーチャルマーケット2021」でメタバース内のショップで店員のアバターによる接客を行ったことで話題になっています。
ビームスのショップでは、メタバース内の商品を購入すると、PCやスマートフォンのECサイトに飛べるようになっています。
この取り組みを農業でも取り入れることができそうだと思いませんか。
メタバース上の農園で収穫体験もできたら、楽しそうですね♪
収穫したものをECサイトで購入できるようにしておけば、自宅に届いて美味しいものが食べられるようになりますね。
農作物だけでなく、農家ならではの食べ方やアレンジ法をNFT化して売買することもできそうです。
メタバースで農業が抱える問題点が解決される?
メタバースで農業が行えたら、在宅で天候に左右されず、アバターが動くため実際の肉体労働に比べると負担が少ないなどメリットがたくさんありそうですよね。
現在の日本では、「スマート農業」の動きが加速しています。
メタバースとは違いますが、その一歩手前のAIやロボットによる農業改革が進められているのです。
現在日本の農業が抱える3つの問題点と解決法を、ここでは紹介したいと思います。
現在の日本が抱える問題点 | スマート農業やメタバースでの解決法 |
農業従事者の高齢化 | 自動運転トラクターによる無人運転、農業用ドローンによる農薬散布、アシストスーツを着用し足腰への負担を軽減 |
後継者が育たない | 熟練者の農業技術の習得が行える学習支援システム |
荒廃農地の増加 | 畑や果樹の権利をNFT化し、サイト内で売買できるプラットフォームを構築 |
問題点と解決法を1つずつ分かりやすく解説していきますね。
高齢化による人手不足解消は無人運転やドローンに期待
農業は、重労働で休みがなく天候に左右され、その年によって収入の差もあり、3K(きつい、稼げない、危険)と言われてきました。
実際に、担い手の高齢化や減少は著しく、その割に新規参入の難しさもあり、深刻な人手不足になっているのです。
私も父の畑仕事を手伝うことがありますが、その度に足腰が痛くなり毎日休みなく働くなんて無理だと思ってしまいました。
私がインドアでパソコンを触っている方が好きだから、というのもあるかもしれませんが、割に合わないですよね。
そこで注目されているのが自動走行トラクターによる無人運転や、農業用ドローンでの農薬散布です。
<自動走行トラクター>
熟練者と同じ位の速度・精度で作業を行うことができるだけでなく、作業に係る疲労が軽減され、より広い面積での作業が可能となり、大規模生産の実現が見込まれています。
遠隔操作や事前に設定することで無人運転が可能なので人手不足解消にも期待されています。
<農業用ドローン>
農薬散布をはじめ、肥料散布(施肥)や種まき(播種)といった、さまざまな用途で活用されています。
農薬の散布は重労働でしたが、農業用ドローンの活用で、農薬散布の省力化・低コスト化が可能になりました。
また、ドローンで撮影した画像で生育状況のばらつきを見える化することもでき、肥料の量の調整がしやすくなると言われています。
<アシストスーツ>
農業では、地面から持ち上げ、地面へ下ろす作業や、中腰のまま行う作業など足腰への負担がかなりあります。
アシストスーツを着用することで、そういった作業をする際に足腰への負担を軽減することができます。
農業に従事する方の高齢化対策として、また新規参入者の仕事環境を整備するうえでも、アシストスーツの役割はますます大きくなっています。
新規参入者がICTを利用して熟練者の農業技術を習得
後継者が育たない原因として、農業への新規参入が難しいという点が大きいです。
農業を始めようとすると、農地を確保し必要な農具を揃えたり、作物の種苗や肥料を揃えたりと多額のお金と広大な土地が必要になります。
その上、自然を相手にする仕事のため熟練された技術がないと、なかなか収入が安定せずに3年以内に「想像していたものと違った」と辞める人が約3割ほどいるのが現実です。
そこで熟練農業者の技術をICT(情報通信技術)を活用して学べる、学習支援システムが開発されました。
この学習システムを使うことで、直接教えてもらわなくても技術を知ることができるようになったのです。
農林水産省のホームページで品目ごとに、熟練農業者の作業のポイントや経営管理が学べるシステムとその成果を見ることができますよ。
また、これまでは従業員が行っていた農場の監視を自動化することで、従業員のワークライフバランスも大きく改善しました。
作物の生育データや、気温・雨量・湿度といった気象データを定期的に収集することで、農場内の状況把握が容易になりました。
湿度の上昇によるカビ増加を防ぐことや、日照りによる水分不足など、農作物を24時間365日守ることができます。
これまでは、農業は休みが取れないのが当たり前でしたが、働き方改革を成功させ、休日や有給休暇を確保しやすくなった農園が増加しています。
新規参入のハードルが低下し、若者や女性も農業にチャレンジしやすい環境が整ってきていますよ。
荒廃農地は畑や果樹の権利をNFT化して売買する
後継者不足によって、荒廃農地や耕作放棄地が増加していることへの対応策として、その土地をNFT化して売買を可能にしようと試みている企業があります。
株式会社 Branding Houseは「おしながき」という農作物・海産物・伝統工芸品などを生産者からユーザーへ直接届けるECサイトを運営しています。
このおしながきで、現実の畑・果樹の権利をNFT化することで誰でも手軽にオーナーになることができるというサービスを2022年中に提供する予定になっています。
自分がオーナーの畑や果樹でとれた野菜や果物は、自由に加工、配送することができます。
また、NFT化された権利を転売することで、差益を出し、転売される度に出品者には利益の一部が還元される仕組みになるようです。
ECサイトは、PCやスマートフォンがあればすぐに購入できるというメリットがある反面、実物を手に取って確認できないデメリットもあります。
そのためNFTがあることで安心して購入を検討することができます。
実際の土地を見に行く前に、ある程度目星を付けることができるため、農業への新規参入のハードルが下がることにも繋がりますね。
メタバースで農業は使いこなせないデメリットも
ここまで問題点の解決法を紹介してきましたが、最先端技術のメタバースを現在の農家の方が使いこなせるのかという問題点もあります。
農カードPROJECTはTwitterが始まりでしたが、そもそもSNSをやっていないと、この活動を知ることは出来ないでしょう。
Clusterのワールドも高齢化が進む農家の方が参入するには、ハードルが高いですよね。
そういったデジタル格差も問題ですが、スマート農業の導入も、その機械に合わせた作りにしないといけないなどの問題点があります。
例えば、農業用ロボットは、過去のデータを元に収穫に適した農作物を判断して収穫してくれるため、農業者の負担が軽減されるといわれています。
その反面、ロボットが収穫しやすいように、植える高さを均一にしないといけないデメリットもあります。
こうしたデメリットも知りながら、日本の食を支える農業が衰退しないように後継者が育つ環境をこれからも整えていくことが大事ですね。
まとめ
- 全国の農家が「農業をもっと身近に感じてもらいたい」と思い、農カードPROJECTを始めた
- 農カードとはひと目でどこで何を作っている農家なのか分かり、裏面のQRコードから生産者の購入サイトにアクセスすることができる
- メタバースプラットフォームCluster内で、農カードPROJECTのワールドが配信されている
- メタバース上で農作物の購入権をNFTで発行することで宣伝にもなる
- メタバースの一歩手前のAIやロボットによるスマート農業が進められている
- デジタル格差によってメタバース技術を使えないデメリットもある
メタバースと農業の組み合わせは実現が難しいと思っていましたが、すでに実現されていることが分かりましたね。
日本の食を支えてくれている農家の方には感謝することを忘れずに、日本の農業がメタバース技術によって発展していったらいいなと思います。
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